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模倣犯(小説)
宮部みゆき/小学館

 本来「金庫」に載るべき本だと思うのだが、文が長くなりそうなので、こちらにした。
 そも、この本は今年の4月下旬、発行直後ではないが、まだ平積みになっている(私の行く本屋ではいくら話題になってもある程度新刊でない限り平積みは許されない。面積的に)時期に、姉上(大)に買ってもらったのだ。新聞広告で目にし、「面白そうだな」と気にはなっていたものの、結構なお値段なので自分では買いあぐねていた。おそらくもの欲しそうな目をしていたのだろう、立ち止まってその本を眺めている私に、姉上は「誕生日プレゼントに買ってあげようか?」と言った。「え?でも1冊2000円くらいするよ?2冊あるんだよ」と言ったが「買ったげらあ」と言う太っ腹な姉上に有難く買っていただいたのだ。う〜ん、どうして私の周りの人はこう気前良いのだ。それはともかく、そうして手に入れたはいいが、読むべく手をつけたのはそれから2ヶ月もあとの6月20日過ぎであった。とりあえず自分の買った本と友人に借りた本を全部読み、寝る前の読書タイムに読む本がなくなるまでそれだけ要したのだった。

 初日は疲れていたので最初の2塊ほどを読んだ。何やら心に傷のあるらしい高校生がメインの塊とこれまた何かある豆腐屋のおじいさんの塊だ。この時点でこの本は塊ごとに主体が変わるんだな、と納得。塊ごとにその人の視点で描かれるので、主体の人の心情や経験したことがよくわかる。まずはメインがこの2人らしいと見当をつける。新聞広告でも高校生と老人の交流が云々と書いてあったような気がする。そしてその2塊ですでに事件は起こっていた。公園のゴミ箱から女性の腕のみが発見されるのだ。ちなみに発見者の一人が前述の高校生である。その日は眠かったのでその後直ちに寝る。

 2晩目に続きにかかる。そしてはまる。主体はこの2人だけではなかった。捜査本部の書類整理担当の刑事。いずれこの件をルポに書こうと動き出す女性ライター。それぞれの人の目からほぼ時系列で事件が語られる。被害者の家族・素人ジャーナリスト・刑事など、事件に関わる一般人的な立場からの目線で。ところでこの本は3部構成である。分厚い本2冊なので、読み始める前にざっと、どういう構成なのか見たのだ。上巻にほぼ1・2部、下巻に2部の終わりの方と3部が入っている。厚さと字の詰まり具合と読んだ時間のページの読み進み具合からして普通のノベルスの厚さに直したら、ノベルス5,6冊分になる内容ではないかと思う。事件は若い女性ばかりを狙った連続殺人事件である。しかも犯人はTV局に電話をかけてきたりして、なめくさっとる。冒頭に出てきたおじいさんは家族思いの良い孫娘が3ヶ月前から行方不明になっていたのだが、その彼女も犠牲者らしいのだ。犯人の電話でおじいさんが振り回されたりするのである。でもこのおじいさんは頭が良いのだ。知識や学力ではなくて本質的なところで頭が良いのだ。そして強い。どんなに精神的打撃を受けても現実に向き合おうとする姿勢を崩さず、しなった竹が戻るように自力で本来の自分を取り戻す。人を見る目もある。人間こうありたいもんだ、という見本のようだ。さて、朝の6:00近くまでぶっとおして読んで「これじゃいかん、明日にこたえる。次の章の分かれ目で今日はやめよう」などと思うと、その章のラストでおじいさんの孫娘の遺体が出てきた、なんて1行でさらっと書いてあるんだもん、せめて遺体発見の経緯を読まないと眠れないじゃないか。読んだらまた犯人に腹が立ったが。そこまで読んでふと見ると上巻がまだ半分来ていなかった。。。先は長い。そして先をパラパラ見る。事件の進み具合から行って2部は何が書いてあるか気になったからだ。タイトルからして1部で事件が解決(?)して2部以降でこの事件を真似た模倣犯でも出てくるのか?頻繁に出てくる人名を見ればある程度想像がつくかも。とパラパラ見ると知らない名前のオンパレードだ。1部で出てきた名前はざっと見たところどこにもない。。。と思ったら目に付いた。2部で主体として扱われる人物の中に1部で犯人の共犯かも、と騒がれ死体で発見される女子高生の名前が。これで2部の見当はついた。同じ事件の経過を犯人側(もしくはその周辺の人)の目で見ているのだろうと。

 3夜目は1部の残りと2部の大半、つまり上巻全部を読んだ。また朝6:00近くまで読み込んでしまった。1部のラストで衝撃を受けたのは犯人と思しい2人組の若者が死体をトランクに入れた車ごと事故で死んだことだ。この時点でこいつらがホントに犯人かどうかは読者には見当がつかない。一般社会及び警察側と同じ視点でしか事件を見ていないから。そして2部突入。今度は犯人側(とその周辺)の視点である。。。そして死んだ二人組みのうち、一人は殺人には全く関係ない、友達思いのいいヤツだというのがじきに判明するのだ。もう一人の死んだ犯人も多少同情の余地がある(多少…ね)。いろいろ精神的にあって、最初の殺人も精神錯乱による衝動的なものだ。このとき、相談した相手がアイツでさえなければ連続殺人犯なんかにならず、一生を女をだます小悪党で終わったかもしれない。。。そーなのだ!真犯人、というか、主犯こそが諸悪の根源!しかしこいつは出てくるくせにここでも主体にならないし、本名も出ない。ニックネームで出るだけである。どう見ても事故で死ぬ方の犯人はこいつに利用されているだけで、しかもその上、この主犯は終始冷静なのだ!腹が立つじゃないか!ニックネームだぞ!本名で出やがれ!と、またムカムカプンプンしながら上巻を読了したところでその日は寝る。

 最終夜、下巻突入。2部のラストは、やはり2人の交通事故死なのである。何故事故にあったか、なるほど納得。この事故まで主犯ヤローの仕込みだったらもっと腹が立ったが、純然と事故だったので、その辺は救われた。しかし、この事故で死んだ犯人ではない男、ホンットに最後の最後まで友達思いのいいヤツだった。。。そして3部、視点はまた1部と同じ側に戻る。そしてついに出たぞ!主犯が本名で!こいつが疑われもせず我が物顔で周りを巻き込んでいく様子にムカッ腹が立つのである!しかも!当たり前っちゃあ当たり前なんだが、事故死した友達思いの男は当然のように犯人とみんなに思われているのだ!そこが悔しい!あんなにいいヤツだったのに!読めば読むほど腹が立って腹が立って犯人の末路を見届けるまで寝れん!と、朝が来て周りが明るくなっても読み続けてしまった。。。そして、ほとんどラスト、犯人の正体が劇的に割れるところで、タイトルの「模倣犯」の意味がわかる。なるほど、こういう意味だったのかーーーと。面白うございました。

 そしてこの作者のうまいところは、主犯をほとんど主体にしなかったことだと思う。主要登場人物はみな、その時の気持ちのみならず過去の思い出などをふと思い出したりして、ここに到るまでの気持ちの経緯とかが、わりと詳しく描かれているのである。よって、事故で死んだ犯人の片割れにさえ、同情の余地あり、と読者は思ってしまうのだが、主犯についてはそれがない。なるほど、複雑な家庭の事情は抱えている。子供時代にこの家庭の事情が主犯の心に傷を作ったであろうことも想像される。しかし、それは周りが調べた形で出てくるだけで、その時々の本人の経験としては語られない。彼がその時、実際に何を思ってどう傷ついたかなど、一切わからないのである。だから読む側は、特に被害者の家族の事情や気持ちを十二分に見ている読む側としては、思う存分主犯を憎めるのだ。そして被害者の家族の気持ちに同調するのであった。。。

 さて、この本は話題の本ではあるし、そのうち映画化とかドラマ化もあるかもしれん。でもこの話は小説媒体がベストであろう。何故ならば、映画やドラマはあらすじは語れてもこれだけ多くの関係者の心を表現することは出来ないだろうから。。。あらためて文章媒体の強さを実感した本であった。  

'01/06/29 UP


ルパン選集
怪盗紳士(小説)
モーリス・ルブラン(久米穣 訳)/偕成出版


アルセーヌ・ルパンていうと、こんな感じ…と描いてみたがちょっとおっさん臭くなりすぎたかな。しかし挿し絵はもっとおっさん臭かった。
 もしかしたら2次元で私の惚れた最初の男かもしれん。それがアルセーヌ・ルパン=怪盗紳士。なんつってもカッコ良かった。小学生のハートを鷲掴みにするには十分に。基本的には推理小説仕立てなのだが、そこはフランス人(?)、大抵美人のお嬢さんとのロマンスが絡むのもOKだ。同じ頃読んでたホームズシリーズも推理小説の王道だが、やはりホームズは地味であった。なんといってもホームズ自身がカッコ良くないのが大マイナス。麻薬打ちやがるし。その点、ルパンは顔はいいわ(しかし素顔は不明)頭はいいわ、で大変よろしい。。。
 ところで、ホントは「奇岩城」について書こうと思っていたのだが、本が見つからなかったので、同じルパンシリーズってことでこれをとりあげたのだ。シリーズ1作目だし。謎解きの面白さは「奇岩城」である(あと「8・1・3の謎」とか)。謎解きの王道、暗号もの!詩とかになっている暗号ものは、出て来るだけでクラクラするほど好きですな、私。
 そして奇岩城は、ジュニア版は結構原作と変えてあったりするのだということを教えてくれた最初の本でもあった。変えてある、というより全部入れてくれてないといった方が正しいか?私が最初に読んだ「奇岩城」は潜水艦で脱出するシーンで終わりであった。次に図書室で借りて読んだやつは陸に上がって無事逃げおおせてめでたし、めでたし、であった。最後に読んだ大人向け(?)文庫は、ルパンが、この人となら、怪盗やめて静かに暮らせるぜ、と心に決めた恋人がホームズに撃ち殺されてしまうところまで入っておった。。。ルパンが可哀想で涙したものだ。そしてホームズは憎まれる(笑)。でも…ジュニア版もちゃんと最後まで入れようよ!えらい話が変わるじゃんよ!としみじみ思ったのであった(子供にあのラストは辛過ぎるってことか?)。それにしても対象年齢や訳者で同じ話もかなり印象変わるねぇ。しかし、ルパンの一人称、「わがはい」や「わし」だけはやめて〜〜〜(心の叫び)。


世界怪奇スリラー全集3
世界のウルトラ怪事件(本)
中岡俊哉/秋田書店

 この本は小学生の時読んだが、恐かった。特に表紙が(笑)。表紙の幽霊みたいな絵は、触るだけで呪われそうな気がして、表紙を見なくても済むように、いつも表紙を下にして置いていたのを覚えている(そして読む時は表紙に触らないようにそのまま開く…)。
 内容は某不思議雑誌「ム○」に載ってそうな、世界で起こった不思議な現象や事件が紹介されている。そして挿絵がまた恐い。子供心に「こんな恐い本、どうしてうちにあるの〜!?」と思いながら読んだ思い出が懐かしい。。。しかも何度も読んでるんだな、これが(笑)。


ポーの一族(マンガ)
萩尾望都/小学館フラワーコミックス

 言わずと知れた少女マンガ永遠の名作。18〜20世紀の(主に)イギリスを舞台にバンパネラ(吸血鬼ね)の少年エドガーを中心にした物語なわけだが、少年マンガで育った私がちゃんと読んだのはかなり遅かった。1巻初版発行が昭和49年。私の家にあるのが昭和61年発行の第36刷である。ということだから、ほんとにかなり遅かった。実は小学生の頃、部分的には読んでいた。姉上(小)が友達と少女マンガ雑誌を分担して買ってみんなで回すということをしていたのだ。そして姉上(小)の大雑把な性格から、本来買った子に返していなければならないはずの「少女コミック」やら「なかよし」やらが時々我が家に転がっていたのである。今も探せばあるかも。。。その関係でシリーズ第1作の「ポーの一族」の連載の最後の回だとか「ピカデリー7時」だとかは読んでいた。が、こんな断片的な読み方では名作の良さはわからないのである。ましてや小学生の頭ではエドガーとアランとポーの名前はエドガー・アラン・ポーから取ったんだな、てことはわかっても、この壮大なドラマを真に理解するのは無理というものだ。この時系列を無視した発表順がね、たぶん小学生の時だとわけわかんなかったと思う。が、幸いにも友人にコミックスを借りてちゃんと読んだのが10代の終わり頃。泣いたぜ。「エディス」のラストで。エドガーは可哀想だわ、オービンさんはシブイわ、で、まさしく「はるかなる一族によせて」てテーマが・・・ああ〜ロマンだ〜。なんか永遠に影で生きなきゃならない吸血鬼の悲哀とかね、そういう伝説に捕われる人間の憧れとかね、そういったものが実に美しく繊細に描かれているのだな。「美しく」←ここがポイント。詩情を感じるといいますか、、、いいなぁ〜、名作ざんす。今回久々に読み返してやっぱりしみじみ名作だと思ったのであったことよ。


海のふしぎ(絵本)
吉田昭作/保育社(科学の絵本)

小さい頃の愛読書。学齢前から見るばかりしていた。「科学の絵本」と書いてあるだけあって、海の成立から地形、生物、自然現象などが絵つきで解説されている。大体は幼稚園児でも読める大きさの字で書いてあったが、後半には読み物が載っていて(しかも科学的な解説内容だ)字のサイズといい、漢字の量といい、これは小学校高学年以上向けであった。おかげで何年も何年も繰り返し読んであきない本であった。

深海魚。リュウグウノツカイ(左)とランプロトクサス=フラジェリバーバ(右)。絵本に載ってる絵を見て描いたが、ちょっと手抜きになってしまった(色とか)。

 セントエルモの火もモンサン・ミッシェルもボアーもオロロッカもギュヨーもリュウグウノツカイもこの本で知ったのが初めである。いい本だねー。


殺人配線図(小説)
仁木悦子/角川書店(角川文庫)


一度描いてみたかった仁木兄妹。雄太郎お兄ちゃんが好きだったなぁ。ちなみに挿絵とかまったくない本なのでこの絵は100%昴の想像で描きました。
 仁木悦子は私の大好きな作家の一人である。読んだきっかけは高校の時、あまなが貸してくれた仁木悦子の代表作「猫は知っていた」からだったと記憶しているが、その後集めた集めた。全部文庫だけど、一応この人の作品(童話はのぞく)は全部持っているはずだ。日本のクリスティと呼ばれる明るいミステリーは何度読み返しても飽きない。特に仁木兄妹のコンビの活躍する話が好きだなぁ。・・・でも、今回とりあげたこの「殺人配線図」には仁木兄妹は全然出てこないんですが(笑)。
 基本的に小説は短編好き(手軽に読み返せるから。読み返さないような本は基本的に買わない主義だし。)で、おまけにキャラに思い入れちゃう方なので、シリーズ短編物なんか大好きなんですが、これはシリーズでもない1冊ものの長編ミステリー。ただミステリー物として私の好きな要素の「暗号解き宝探し」が入っているのだな。しかもこの暗号はラジオの配線図なのだ。某資産家の遺したラジオの配線図がその邸の見取り図とほぼ重なる作りになってて、配線図としては致命的な欠陥がある部分が宝の隠し場所じゃないかと見当をつけて探したら・・・、て具合。で、当然人死には出る。ラジオを自分で作ったことなんかないから配線図の謎なんかは登場人物に解説してもらわないとさっぱりわからないのだが、犯人も判明し、ちゃんと宝も出てくる(っていっても遺産だからね。大仰な財宝を想像しちゃいかんよ)くだりで、「ほう」と感心させられた覚えがある。とにかく面白いのだ。この人の本は。遺作となった「聖い夜の中で」は短編集だったが、泣かされたし。
 余談だがこの人の原作というふれこみのサスペンスドラマは火曜サ○ペンスや土曜ワ○ドで何度かやったが、原作ファンとしては不満だらけのものが多かった。短編を原作にするわけだからエピソードとか増やさにゃならんのはわかるが、どうしてそうドロドロした方へ持って行くのだ?この人の作品は明るい清潔感がいいのだぞ。と、常々不満だらけだった。が、水谷豊が主演した「聖い夜の中で」は良かった。やっぱり話は激しく変わっていたが、原作の持ってる明るい悲しさをちゃんと出していた。私はあのドラマは泣いたぞ。仁木作品をドラマ化するならいつもこうあって欲しいものであるよ。ホントに。


ブラック・ジャック(マンガ)
手塚治虫/秋田書店

 言わずとしれた名作。モグリの天才外科医ブラック・ジャックの出会うエピソード。小6のとき、姉上(小)が借りてきた(何故か2巻と5巻)を読んで、はまった。BJに惚れた(特にピノコといる時が良い)。私はコレで漫画にはまりました、というエポックメイキングな作品。真似して描いたね、あらゆるシーンを。これ以来、コミックスをがんがん買い集めるようになった。マンガ雑誌も買うようになった。今読んでも面白いし、名作だ〜。
 この頃の少年チャンピオンて150円だったかな。「ドカベン」「がきデカ」「マカロニほうれん荘」「ブラック・ジャック」と、結構すごい連載目白押しだったんだなぁ。。。(遠い目)。まだ(BJの)アニメは見たことないんだけどいずれ見たい。予約限定の「BLACK JACK BOX」は単行本未収録作品が2本入るというので予約してしまった。でもピノコフィギュアとか、別にいらないんだけど・・・(苦笑)。久々に描いてみたけど、見て描くとソックリに描く自信があるので、わざと記憶だけで描いて私風を目指してみました(その方が面白いかと思って)。いかが?


ヨン博士の航星日記
レム作・袋一平訳/集英社「ジュニア版世界のSF」

 我が家は年の離れた姉上が二人いるので、物心ついた時には彼女達用に購入された本が山のようにあった。で、ジュニア版世界のSFシリーズもいっぱいあった。その中で、今回ことさらこの本を選んだのは、内容は覚えていないものの、トリスのCMのような挿絵に誘われて、幼稚園の時に読んだ記憶があるからだ。幼稚園だからひらがなとカタカナしか読めない。ルビがふってある漢字はいいが、それ以外の漢字は全滅、という状態で読破した。漢字は全部勘で読んだ。こうして、少々わからない単語があっても勘で意味をとるという、高校時代の英語長文読解方法はこの本で培われたのであった。。。



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