私ことすばるは自称「切り貼りキング」である。それ程に大量に切り貼りをする。PROMI内でおそらく一番多用している。だから「キング」といってもPROMINENCE内での最多利用者という狭〜い意味なのだが・・・(しかもそれ程たくさん修正しなければならんほど絵が下手であるという証拠の気もするが・・・)。今回はこの切り貼りについて語るのである。
ではここで、マンガを描いている人間なら大抵知っているが、そうでない人間にはとんと縁のない言葉、「切り貼り」について解説をば。 「切り貼り」とは、お絵描きの失敗をした際の修正方法である。修正方法の代表格はホワイトという。ホワイトは修正液やら、ポスターカラーやらの白い不透明液を失敗した部分に塗りつけ、黒いインクを覆い隠して見えなくすることによって、失敗をなかったことのように見せるテクニック(笑)である。対して「切り貼り」は、その名のとおり、紙を切って貼ることによって失敗した部分を丸ごとナイナイしてしまうのである。例えば失敗の範囲が大きい場合や、直した上からもう一度絵を描かねばならない場合に向いている。もちろん、修正液で下の線を消した場合も上に描くことはできるが、修正液の上から描くのと、新しい紙の上に描くのでは描き味その他に激しく違いがあるのはやったことのない人でも想像がつくであろう。(修正液の上から消しゴムをかけると修正液部分がどす黒くなっちゃうし・・・)。
まず直したい部分の後ろに直したい部分より大き目の紙を貼る(図1)。これは仮止めなのでマスキングテープやドラフティングテープのような貼ってはがせるテープを使用する。また、この新しい紙は直す部分のある紙と同じ種類&厚さの紙が良い。同じ種類がない場合はせめて厚さだけでもなるべく同じにするのだ。ちなみに図ではわかりやすいように直す部分のある紙を水色、新しい紙を黄色で塗ってある。本来はどっちも白い紙ね。でもって、フルカラー印刷の時は切り貼りはおろか、ホワイト修正もしちゃダメよ。全部印刷に出ちゃうよ。出てもいいならいいけどね。 | |||
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もちろん、度が過ぎると今度は嵌める側が大きすぎてはまらない、なんて事態も起こらないことはないので、切る角度もある程度の経験と熟練の技が必要となるのだが。しょせんマンガ描きとは職人芸である。技術は自分で体得するしかない世界なのだ。 とはいえ、うまく切り貼れなかった時の誤魔化し方もたくさんある。隙間があいたらホワイトをドボドボ塗って隙間を塗りこめてしまうのだ。大きくてはまらなかったら重なった部分のみ細く切って紙を小さくしてもいいし、段差のあるまま固定してホワイトで段差を塗りこめ、スロープにするという手もある。要は印刷にうつらなきゃいいのだ。でもこれをすると紙の継ぎ目がデコボコするので快適な描き直しの邪魔になるのだ。だからなるべく美しい切り貼りを目指すのがよいのであるよ。 | |||
切り貼りというものがどんなものか理解したところで、切り貼りキングの華麗なる切り貼り芸(?)をご覧にいれよう。といっても切り貼りの過程をVDで公開するのもなんなので、印象的な切り貼りの入ったカットを公開。わかりやすくするため、切り貼った個所に色をつけてみた。 「華炎戯鬼譚(前編):SpaceOdyssey15掲載」より 「幻妖伝説・第4章:SpaceOdyssey15掲載」より 「妄執鬼:DARK SIDE BLUES掲載」より
「別館*応接間」の「マンガ展示室」に掲載しているマンガは手直しをしているものがある。古い絵が許せなかったりの、もろもろの理由からである。その手直し版はいかにして作成されるか?もちろん切り貼りである。 まずは本をコピーしてくる。そのコピーの直したい部分を切り貼るのである。 しかし一つ問題がある。それはコピー用紙の紙の薄さ。かといってコピー用紙みたいなボロ紙にインクで描いたらにじんじゃうしな・・・というわけで厚さが違う紙同士だと段差ができてしまうという事実をあえて無視し、コピー用紙に原稿用紙を切り貼るという暴挙に出ることにした。 1ページ目、氷月くん初登場(このマンガの中でね)シーンのため、お顔を丸ごと切り貼りで修正。・・・もう顔が全っ然ちがう(?!)。紙の厚さが違うせいで切り貼りの段差の影が出ているのがおわかりだろうか。今回、企画が企画だけにわざと影を消していない。 これは切り貼りにあらず、前髪と睫毛の描き足しのみ。並べて見ると間違い探しのようだ…(汗)。違いがおわかりだろうか。ちょっと下睫毛とかはこの解像度じゃ見えないかも。 これも切り貼りにあらず。最初はなかった書き文字を入れてみた。 これは切り貼り。困ったのは背景のカケアミ。あまなに描いてもらったやつなのだ。しかも本のコピーだから原寸より縮小されている。しかし切り貼りの範囲を考えると似せてカケアミするしかあるまい。ということで、元絵を見ながらカケアミもした。もし印刷すれば継ぎ目はわからないはずだ。
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