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切り貼りキング
〜付・手直し版の作り方〜

 私ことすばるは自称「切り貼りキング」である。それ程に大量に切り貼りをする。PROMI内でおそらく一番多用している。だから「キング」といってもPROMINENCE内での最多利用者という狭〜い意味なのだが・・・(しかもそれ程たくさん修正しなければならんほど絵が下手であるという証拠の気もするが・・・)。今回はこの切り貼りについて語るのである。

1章 切り貼りの基礎知識

 ではここで、マンガを描いている人間なら大抵知っているが、そうでない人間にはとんと縁のない言葉、「切り貼り」について解説をば。
 「切り貼り」とは、お絵描きの失敗をした際の修正方法である。修正方法の代表格はホワイトという。ホワイトは修正液やら、ポスターカラーやらの白い不透明液を失敗した部分に塗りつけ、黒いインクを覆い隠して見えなくすることによって、失敗をなかったことのように見せるテクニック(笑)である。対して「切り貼り」は、その名のとおり、紙を切って貼ることによって失敗した部分を丸ごとナイナイしてしまうのである。例えば失敗の範囲が大きい場合や、直した上からもう一度絵を描かねばならない場合に向いている。もちろん、修正液で下の線を消した場合も上に描くことはできるが、修正液の上から描くのと、新しい紙の上に描くのでは描き味その他に激しく違いがあるのはやったことのない人でも想像がつくであろう。(修正液の上から消しゴムをかけると修正液部分がどす黒くなっちゃうし・・・)。

 ではいよいよ具体的なやり方について。
 まず直したい部分の後ろに直したい部分より大き目の紙を貼る(図1)。これは仮止めなのでマスキングテープやドラフティングテープのような貼ってはがせるテープを使用する。また、この新しい紙は直す部分のある紙と同じ種類&厚さの紙が良い。同じ種類がない場合はせめて厚さだけでもなるべく同じにするのだ。ちなみに図ではわかりやすいように直す部分のある紙を水色、新しい紙を黄色で塗ってある。本来はどっちも白い紙ね。でもって、フルカラー印刷の時は切り貼りはおろか、ホワイト修正もしちゃダメよ。全部印刷に出ちゃうよ。出てもいいならいいけどね。

 次に直したい部分を囲むように裏に貼りつけた紙ごと切り抜く(図2)。なるべく直線的な線で切ったほうが良い。さらに上の紙だけ切れて下の紙は切れてないなんてことのないように思い切って切る!「角が切れてなかった」なんてことのないように、角はややクロス気味に切る!

 切り抜けたら直す部分を除けて、同じ形になっているはずの新しい紙を裏から嵌めこみ、メンディングテープでしっかり貼る(図3)。この時テープの上から紙と紙の継ぎ目を爪でこすってデコボコをなくすようにするのを忘れないように。

 これにて直したい部分はスッキリ取り払われ、白い紙に化けたので、新しく絵を描けばよいのである(図4)。

 切り貼りとはたったこれだけの手順なので、簡単ではあるが、一応コツというものがある。切っている途中でうっかり上と下の紙がズレて嵌め込んでも隙間が出る、とかいう失敗は気をつけるのと慣れとでなくなるはずだが、横から見た時、図5−1のように垂直に切ってしまっても隙間が出来やすいのだ。図5−2のように心持ち斜めに切るように心がけねばならない。こうすることによって隙間なく美しく紙が嵌めこまれ、快適な描き直しライフが楽しめるのだ。
 もちろん、度が過ぎると今度は嵌める側が大きすぎてはまらない、なんて事態も起こらないことはないので、切る角度もある程度の経験と熟練の技が必要となるのだが。しょせんマンガ描きとは職人芸である。技術は自分で体得するしかない世界なのだ。
 とはいえ、うまく切り貼れなかった時の誤魔化し方もたくさんある。隙間があいたらホワイトをドボドボ塗って隙間を塗りこめてしまうのだ。大きくてはまらなかったら重なった部分のみ細く切って紙を小さくしてもいいし、段差のあるまま固定してホワイトで段差を塗りこめ、スロープにするという手もある。要は印刷にうつらなきゃいいのだ。でもこれをすると紙の継ぎ目がデコボコするので快適な描き直しの邪魔になるのだ。だからなるべく美しい切り貼りを目指すのがよいのであるよ。

2章 切り貼りキングの華麗なる(笑)作品

 切り貼りというものがどんなものか理解したところで、切り貼りキングの華麗なる切り貼り芸(?)をご覧にいれよう。といっても切り貼りの過程をVDで公開するのもなんなので、印象的な切り貼りの入ったカットを公開。わかりやすくするため、切り貼った個所に色をつけてみた。

「華炎戯鬼譚(前編):SpaceOdyssey15掲載」より
 PROMINENCE副会長・あまながゲラゲラ笑った絵。シリアスマンガの、シリアス敵キャラの初登場シーンなのに…。でも本で見る分には切り貼っているなんて全然わからない。原画を見ると口の部分のみの切り貼りが笑いを誘うらしい・・・。


「幻妖伝説・第4章:SpaceOdyssey15掲載」より
 たまにやる1ヵ所二重・三重切り貼り。これは二重。合作では特に切り貼り率のアップする私。「幻妖〜」はなかなか星弥と会えないため、作業の効率化を目指して、絡みのシーンを描くとき、相手が下描きさえしていないのにペン入れまで済ましちゃうのである。この時も鉄くん(右)をペン入れして星弥に渡し、星弥が聖夜くん(左)をペン入れして、返ってきた原稿を見ると、見事に鉄くんの目線に問題があった。よって顔を切り貼り。顔の角度が変わったら今度はポーズに無理が出てきた。よって首から下を切り貼った。このように切り貼りとはやむにやまれぬ事情があって行われることが多いのだ。


「妄執鬼:DARK SIDE BLUES掲載」より
 切り貼り大王…違った、切り貼りキング自慢の一品。面積最小マイ・ギネス記録(マイ・ギネスって・・・大矛盾・笑)。逆三角形の底辺部が5ミリ、他の辺が3ミリ位。口が歪んだので最初は修正液で直したが、失敗した上、口のあたりが盛り上がって描きづらくなったので切り貼りを敢行。米粒に絵を描く心境で臨んだ。この記録はそうそう破られることはないであろう。

3章 手直し版の作り方

 「別館*応接間」の「マンガ展示室」に掲載しているマンガは手直しをしているものがある。古い絵が許せなかったりの、もろもろの理由からである。その手直し版はいかにして作成されるか?もちろん切り貼りである。
 まずは本をコピーしてくる。そのコピーの直したい部分を切り貼るのである。
 しかし一つ問題がある。それはコピー用紙の紙の薄さ。かといってコピー用紙みたいなボロ紙にインクで描いたらにじんじゃうしな・・・というわけで厚さが違う紙同士だと段差ができてしまうという事実をあえて無視し、コピー用紙に原稿用紙を切り貼るという暴挙に出ることにした。

★「凍える街」の場合★
 最初に作った手直し版。これの修正ポイントは、まず氷月&氷月くんの顔。古すぎて許せない顔の切り貼り。そこまでではない顔も前髪が短過ぎるのと、氷月くんに睫毛が無さ過ぎる(笑)のを修正。従ってほとんど全ページに修正が入っている。そのいくつかを元絵と並べて(汗)ご紹介。左(又は上)が元絵、右(又は下)が修正後。

 1ページ目、氷月くん初登場(このマンガの中でね)シーンのため、お顔を丸ごと切り貼りで修正。・・・もう顔が全っ然ちがう(?!)。紙の厚さが違うせいで切り貼りの段差の影が出ているのがおわかりだろうか。今回、企画が企画だけにわざと影を消していない。


 これは切り貼りにあらず、前髪と睫毛の描き足しのみ。並べて見ると間違い探しのようだ…(汗)。違いがおわかりだろうか。ちょっと下睫毛とかはこの解像度じゃ見えないかも。


 これも切り貼りにあらず。最初はなかった書き文字を入れてみた。


 これは切り貼り。困ったのは背景のカケアミ。あまなに描いてもらったやつなのだ。しかも本のコピーだから原寸より縮小されている。しかし切り貼りの範囲を考えると似せてカケアミするしかあるまい。ということで、元絵を見ながらカケアミもした。もし印刷すれば継ぎ目はわからないはずだ。
★「四界創世記1予告編」の場合★

亜夢さん用絵コンテ

亜夢さんから上がってきた原稿

同コマ仕上がり

すばる担当ゴマ下描き

同コマベタ終了(あとセリフ貼るだけ)
 これの直しは絵の問題ではない。絵が古いのを気にしてたら全部描き直しじゃ。だから絵の古さに関しては目を瞑る。「四界〜」は予告当初と本編で変更点がいっぱい出たので本編では出ないキャラの出ているコマetcを直さざるを得なかったのだ。大半の直しゴマが亜夢さんのキャラだったため、直すコマのサイズを測ってコンテを作成。出来た原稿を上から貼り付ける方式にする。どんどん投げやり。HPにあげるためにはパソに読みこんでから影とかを消したりの修正ができるからよいのだ。



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